2011年05月24日
お話「モリモリ森のこと、そして震災、自然と人のこと」


~「モリモリ森の宝物」当日資料より、文責:普天間明日香
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今日歩くネバル御嶽の海岸林は、御嶽という信仰の場であったが故に大切に保存されてきた、貴重な海岸林です。
亜熱帯の植物が良好な状態でまとまって現存しているので、県の天然記念物に指定されています。
沖縄で今でもとても大切にされている「御嶽」とは、神様が降臨・鎮座するとされる自然空間に設けられた信仰の場で、村の人以外は入ることも許されない聖域です。根原御嶽(ネバルうたき)は、仲筋村という今は廃村になった村の拝所でした。これから歩く道は、かつての村人が神聖な気持ちで通った参道です。「おじゃまします。」という気持ちで散策したいと思います。
3月11日に起きた東日本大震災ではたくさんの犠牲者が出てしまいました。
ご冥福をお祈りするとともに被災された方々が一刻も早く落ち着いて生活できるときが来ることをお祈りします。被災地が復興できるまではまだまだ時間がかかり、決して一段落した訳でもありませんが、この震災から考えるべきことはたくさんあると思います。
観察するのも自然、襲ってくるのも自然。
ネバル御嶽に村人が通っていた頃の生活とは一変してしまっていますが、私達はやっぱり自然の一部なのだと改めて思い知らされました。その中で先人の教えを守り人的被害を逃れた東北の村の存在が忘れられません。
私達にできることが何かはっきりとわかりませんが、先人の視線に思いを馳せ、今一度、謙虚な気持ちで自然に向き合い、人と自然について考える時間を増やしていけたら、そしてそれをみんなで共有できたら...。石垣島海森学校で少しでもそんな時間を過ごしてもらえたら、と思います。

さて、ネバルの森のお話です。
この地域の山麓からリーフまでは、サンゴ礁堆積物からなる琉球石灰岩地帯なので地下にすき間が多く、山の水の大半はその地下のすき間を通って海へ入っていきます。豊かな山の養分が海にたくさん入っているからサンゴ礁も発達するのだそうです。海にも山の恵みは大事なんですね。家に帰ったら石垣市のホームページにある「島っぷ」(http://isggisw02.city.ishigaki.okinawa.jp/ishigakimap/default.jsp?defaultservice=inet_orthoH18&defaultxcoord=&defaultycoord=&defaultscale=)でこのあたりの航空写真を是非見てみてください。山からの淡水が流入してできた水の道の脇に発達したサンゴ礁の盛り盛りっぷりが確認できますよ。
今日歩くのは、海からの北東季節風に吹き上げられた細かい砂が堆積してできた砂丘の上に発達した海岸林です。落ち葉が積もってできたふかふかの土、みんなが踏み固めてできた細い道、ゆるやかな斜面に表れる砂地を見て踏んでそれぞれを実感してみてください。
ところで植物には“アルカリ土壌を好む植物”や“酸性土壌を好む植物”なんてのがいます。ネバルの森は石灰岩地帯なので“アルカリ土壌を好む植物”リュウキュウガキ、オオバギ、ハスノハギリ、コバテイシ、ハマイヌビワ、アカテツなどが多くみられます。そして、リュウキュウガキなどの根に寄生して生育するリュウキュウツチトリモチ(準絶滅危惧種なのでみつけてもそっとしておいてくださいね。)も多くみられます。毎年12月に地面から朱色の花をにょきにょき出しています。今はどんな状態なのか観察してみてくださいね。
植物は土壌の質、明るい環境、半日陰、水分の多いところ、乾いたところなどなど、種によって好みの環境はいろいろです。今そこに元気いっぱい育っている植物は、その環境が居心地よかったから元気がいい。そして、自分の子孫たちも元気いっぱい育ってどんどん広がっていってほしい。(人も植物も一緒ですね。)でも植物は一度生えたらそこから一生動けません。そこで、長い長い時間をかけて、種子を包む果実を、風、水、動物などの力を利用することのできる様々な形態に発達させてきました。植物の名前を覚えるときに、植物たちのあの手この手の生き残り戦略を一緒に覚えるとより観察が楽しくなります。観察会では、少しですがその一部をご紹介したいと思います。

Posted by 石垣島海森学校 at 15:34│Comments(0)
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