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2010年12月03日

山わらばーの学校便り「バンナの森とヒトの幸せな未来について」

ふたばバンナの森とヒトの幸せな未来についてふたば

石垣島自然観察の会会長 谷崎樹生


未来を考えるためには、過去を知ることが大切です。



現在、家庭で使うエネルギーというとプロパンガスか灯油か電気でしょう。
なかにはオール電化でガスも灯油も使っていない家庭もあるでしょう。
ところが、50年ほど前まで家庭用エネルギーというと、薪と木炭がほとんどで、
電力の消費量も現在より遙かに少ないものでした。


当時、バンナ岳は字石垣と字大川の里山薪炭林として利用され、炭焼きも盛んに行われていました。
昭和20年代の石垣島の風景写真を見ると、驚くほど樹が少なく、
バンナ岳や前勢岳の南斜面はまるで現在の平久保半島の東側のような禿げ山になっており、
チガヤやススキの草原が斜面を覆っていたようです。

これは山麓の畑や棚田の畦焼きの火が野火となって
斜面を焼き払ってしまう原野火災が頻発していたからです炎炎
薪炭林としての資源管理法にも問題があったようで、昭和30年代まで石垣島の里山薪炭林は
過度に利用され、疲弊していたようですsos
30年代半ばに起こったエネルギー革命によってプロパンガスが普及すると、薪や木炭の需要は激減し、
おかげで島の森は救われたのです。



古代ギリシャや古代ローマではすでに森林破壊が進み、
森の跡に開かれた農地や放牧場からの土壌流失が起こっていました。
こうして今日見られる、岩山と荒れ地でも育つオリーブやブドウの畑が広がる
地中海らしい風景が作られたのです。
ヨーロッパで石造りやコンクリート造りの建物が多いのは森が少なく樹が足りないからに他なりませんおうち



彼の地より雨が多く、降り方も激しい石垣島ですから、あと数十年エネルギー革命が遅れていたら
島の風景は随分地中海的になっていたかもしれません。
エネルギー革命が起こった頃、島では造林ブームも起こりました。
様々な団体が造林組合を作り、市有地であるバンナ岳や前勢岳でも市と分収契約を結んだ造林組合が
リュウキュウマツやクスノキなどの苗木を植えたようです。
植林されなかった所は放置され、自然林が回復していきましたふたば



市街地から見ると山全体が立派な森に覆われているように見えるバンナ岳ですが、
じつはいろんなタイプの森のパッチワークのようになっているのです。

中でもドングリの木(オキナワジイやオキナワウラジロガシ)の森は昔ながらの古い森です。
ヒカゲヘゴの胞子は風で運ばれ、タブノキの種子は鳥に、フクギの種子はオオコウモリによって
運ばれますからチガヤの草原も放置されればやがてタブノキやヒカゲヘゴやフクギが生い茂る森に
なりますが、ドングリはそのような場所に自力でやってくることはできません。



今年は久しぶりにドングリが大豊作です。
オキナワジイもオキナワウラジロガシもたくさんドングリを作っています。
今シーズン実っているドングリは、じつは去年の春に咲いた雌花が一年半かかって作ったものなのです。


山わらばーの学校便り「バンナの森とヒトの幸せな未来について」





























なぜそんなに時間をかけてドングリを作るのか?
そもそもいったいドングリはどこからどのようにしてこの島にやってきたのか?
小さなドングリにも大きな大きな謎がたくさん詰まっているのです。
そんなドングリ達に敬意を払いながら、バンナの森を探検して、
これから私たちはどのようにしてこの森と関わっていけばいいのかを考えてみましょうおすまし



今回のコースでは、磯辺川の源流、小さな流れが始まる所を見ることができますキョロキョロ
森の土の中から染み出してきた水が集まって、川が生まれる瞬間です。
山わらばーの学校便り「バンナの森とヒトの幸せな未来について」





















「森は海の恋人」とよく言われますが、「森は川の母」でもあるのです。
島の水を守るためにも森は無くてはならないものなのですタラ~

樹は太陽の缶詰です晴れ
植物は太陽の光エネルギーを使って水と二酸化炭素から有機物を合成します。
樹にはセルロースやリグニンといった長期保存の利く有機物が蓄えられます。
光エネルギーが化学エネルギーに変えられて保存されているのです。
薪を燃やせば、太陽の缶詰が開けられ化学エネルギーが熱エネルギーになって飛び出してきます。
だから、焚き火や薪ストーブの火には、日向ぼっこのような暖かさが感じられるのかもしれません。



どうやら、バンナの森とヒトの幸せな未来は、「節度のある利用」というところにありそうですコレ!
自然保護には「保存」と「保全」と「復元」という三本柱があります。
極端な自然保護主義者の人達は「保存」ばかりを強調しますが、
バンナの森に必要なのは、人が利用しつつ維持していく「保全」だと思うのです。
先人達の経験をふまえて、より良い方法で森を利用しつつ維持していくことが、
これからの私たちの課題です☆


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Posted by 石垣島海森学校 at 19:23│Comments(0)ブログ
 
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